第壱拾四話 咆哮『暴かれた納骨堂B6』にて、魂の指輪『ホロウサークルズ』を狙うクロード達と、指輪の守護者ブレイマとの死闘が始まろうとしていた。 「もう一度聞く、貴方は『ホロウサークルズ』を素直に渡すつもりはないのですな?」 「何度言えばわかる、『ホロウサークルズ』が欲しければ、この我を倒すことだ」 「…………」 ゼグラムが、やれやれといった表情でブレイマを見つめる。 「…貴方も頭がさぞかし回らないようで」 その言葉に業を煮やしたのか、ブレイマが周りにいた『ファミリア』や『骸骨剣士』に命令する。 「ふざけおって、やれ!我部下達よ!!侵入者を切り刻んでしまえ!」 その言葉に、周りの『ファミリア』『骸骨剣士』達が殺意の眼差しをクロード達に向け、飛び掛っていく。 B5などにいたモンスターとは違った機敏な動き、体中に見える傷跡がその1匹1匹を歴戦の兵であることを物語っていた。 かなりの数に、クロードは微かな焦りを覚え、ゼグラムに言う。 「紅龍様、この数はさすがに厳しいのでは?」 「…………」 紅龍は目を閉じ、言葉を返さない。その間にも、ブレイマの部下のモンスター達は迫ってくる。 ―何をしているのだ!?紅龍様は!?― 何もしない紅龍の行動に、ブレイマが侮蔑をこめた言葉を言う。 「ふっ、あきらめたのか!?」 そして、先頭にいた『ファミリア』の一撃が今、紅龍に繰り出されようとした時、紅龍はやっと言葉を返す。 「…問題は無い」 そして紅龍の瞳が開き、迫ってくるモンスター達に鋭い眼光を向けた。 すると、先頭にいた『ファミリア』の一撃が、紅龍の目と鼻の先で止まった。 「!?」 ブレイマとクロードが何事かと見ていると、紅龍に殺到したモンスター達に異変が生じた。 ある『骸骨剣士』は狂ったように自らをその剣で切り裂き、ある『ファミリア』はいきなり目が見えなくなったように戸惑い、近くの壁に激突した。 他には、毒に苦しんでいるものや、眠っているもの、体が麻痺して動けないものもいる。 「…何が起こっている?」 クロードは恐る恐る立ち上がり、先頭で止まっている『ファミリア』に触れると、岩のような感触があった。 「…これは、石化?」 「…その通りです、クロード様」 紅龍が放った眼光の正体は、『アイオブザビホルダー』と呼ばれるスキルだ。この眼光に見つめられた者は、各種状態異常を引き起こす高難易度のスキルである。 「…ま、魔力の消費が多いので、そう乱用はできませんがね」 各種状態異常で苦しんでいるモンスター達を見ながら、紅龍は呟いた。 ブレイマはその様子を驚いた様子で見渡す。 「まさか、そのスキルを使えるとは…少々、見くびっていたようだな」 その言葉を聞き、紅龍がブレイマに向き直る。 「貴方も、そう楽観的なことをいってられる状態ではないようですよ?」 「何…?」 慌ててブレイマが自分の体を見渡すと、特に異変はなく、何も異常は無いように見える。 安堵の息をつき、ブレイマは言う。 「…何にも異常はないではないか、驚かせよっt…」 その言葉を言い終わる前に、ブレイマの右腕を激痛が襲った。 巨大な鎌をもった右腕が宙を舞う。 「うぐおおっ!!?」 ブレイマが見せた一瞬の隙をついて、クロードが手刀で右腕を切り裂いたのだ。 ブレイマの巨体が、膝をついて地に崩れ落ちる。 クロードは落ちてきた右腕をキャッチすると、その指から『ホロウサークルズ』を抜き取った。 「おのれ…卑怯な…」 ブレイマが呟くと、紅龍がその言葉に返事をする。 「卑怯?闘いに卑怯も何もありますかね?油断した貴方が悪いのです」 「…く…」 「さて、そろそろ眠っていただきますか…さようなら、ブレイマ殿」 紅龍の指から光が発せられたのを見た後、ブレイマの意識が途切れた。 ジャンル別一覧
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